あべんじゃのブログ

学んだことや科学・技術・教育などについて書いて行けたらと思ったり思わなかったり。

半導体の勉強に使った本

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小林聡志,金子双男,加藤景三 著 『基礎半導体工学』 コロナ社 (1996)

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【目次】

1. 半導体
1.1 抵抗率と導電率
1.2 半導体
1.3 代表的な半導体
1.4 シリコン
1.5 導電率制御
問題
2. キャリヤの運動
2.1 電界中における電子の運動
2.2 拡散による電子の運動
2.3 磁界中の電子の運動
  2.3.1 ローレンツ
  2.3.2 ホール効果
付録2.1
付録2.2
問題
3. エネルギー帯図
3.1 エネルギー準位
3.2 電子配置
3.3 共有結合
3.4 エネルギー帯
3.5 シリコンのエネルギー帯
3.6 真性半導体のエネルギー帯図
3.7 不純物半導体のエネルギー帯図
3.8 ドナー準位
3.9 電気伝導の概略
3.10 導体,半導体および絶縁体の区別
3.11 波数空間でのエネルギー状態
3.12 電気伝導
問題
4. キャリヤ濃度
4.1 分布関数
4.2 キャリヤ濃度
4.3 真性半導体
4.4 不純物半導体(Ⅰ)
4.5 不純物半導体(Ⅱ)
4.6 多数キャリヤと小数キャリヤ
4.7 導電率の温度依存性
4.8 禁制帯幅とイオン化エネルギーの求め方
  4.8.1 禁制帯幅
  4.8.2 ドナーのイオン化エネルギー
付録4.1
問題
5. 非平衡状態のキャリヤ
5.1 非平衡状態の例
5.2 小数キャリヤの発生と消滅
5.3 再結合
  5.3.1 直接再結合
  5.3.2 再結合中心を介しての再結合
  5.3.3 表面再結合
5.4 連続の方程式
問題
6. pn接合
6.1 pn接合の構造
6.2 pn結合のエネルギー帯図
6.3 拡散電位
6.4 階段接合
付録6.1
付録6.2
問題
7. pn接合ダイオード
7.1 小数キャリヤの注入
7.2 小数キャリヤの分布
7.3 電圧電流特性(1)
7.4 電圧電流特性(2)
7.5 降伏現象
  7.5.1 ツェナー降伏
  7.5.2 電子雪崩降伏
問題
8. 金属と半導体の接触
8.1 金属-半導体接触のエネルギー帯図
  8.1.1 φm>φsの場合
  8.1.2 φm<φsの場合
8.2 整流性
  8.2.1 φm>φsの場合
  8.2.2 φm<φsの場合
8.3 電圧電流特性
8.4 電圧-容量特性
問題
9. バイポーラトランジスタ
9.1 バイポーラトランジスタの構造
9.2 バイポーラトランジスタの動作原理
9.3 バイポーラトランジスタの記号
9.4 バイポーラトランジスタの出力特性
  9.4.1 ベース接地
  9.4.2 エミッタ接地
9.5 トランジスタの直接特性
9.6 電流増幅率とバイポーラトランジスタの基本設計
  9.6.1 エミッタ効率γ
  9.6.2 到達率
  9.6.3 真性電流増幅率
  9.6.4 電流増幅率
9.7 バイポーラトランジスタの交流特性
問題
10. 電界効果トランジスタ
10.1 接合形電界効果トランジスタ(JFET)
10.2 接合形電界効果トランジスタの静特性
10.3 MIS構造
  10.3.1 エネルギー帯図と電荷分布
  10.3.2 MIS容量
10.4 MIS電界効果トランジスタ(MISFET)
  10.4.1 動作原理の概要
  10.4.2 MISFETの静特性
  10.4.3 MOSFET
10.5 SBFET
問題
11. 半導体バイス
11.1 負性抵抗素子
  11.1.1 トンネル(エサキ)ダイオード
  11.1.2 pnpnスイッチ
  11.1.3 サイリスタ
11.2 高周波デバイス
  11.2.1 ガンダイオード(電子遷移効果ダイオード
  11.2.2 インパットダイオード
11.3 光半導体バイス
  11.3.1 半導体の光吸収
  11.3.2 光導電セル(光導電デバイス
  11.3.3 太陽電池
  11.3.4 ホトダイオード
  11.3.5 ホトトランジスタ
  11.3.6 発光ダイオード
  11.3.7 半導体レーザ
11.4 センサ
11.5 その他のデバイス
  11.5.1 薄膜トランジスタ
  11.5.2 高電子移動度トランジスタ
  11.5.3 量子効果デバイス
問題
12. 半導体バイス作製技術
12.1 シリコン単結晶の引上げ法
12.2 化学的気相成長(CVD)法
12.3 物理的気相成長(PVD)法
12.4 集積回路(IC)とIC作製技術
  12.4.1 集積回路
  12.4.2 IC作製技術
問題
付録
問題解答
索引

 

大学の半導体の講義で指定された本でした。大学の講義で指定された本にしては珍しく(?)分かりやすいなと思いましたね。

 

第1~2章は基本的な電気回路や化学を知っていればスルーしてもいいぐらい基本的な内容、導入ですね。ホール効果なんかも電気回路や電磁気で出てきますね。

拡散現象については初学の時点ではなじみがない人が多いと思うので丁寧に読んだ方がいいと思います。非平衡の熱力学などを勉強したことがあれば拡散方程式の扱いも楽かもしれません。拡散現象、拡散方程式を使った半導体中の電子濃度、正孔濃度の拡散の解説がされています。後々の章でも度々登場するので、その都度読み直すといいとと思います。

 

第3章からがこの本の本番ですね。ここからバンド図を使った解説が始まります。金属や絶縁体と半導体の違い、真性半導体(不純物なし)と不純物半導体の違いや特性をバンド図と言葉で以て解説されています。3.11~3.12節は少し込み入った話になるのでの初学の時点では飛ばしても良いと思います。

 

第4章ではフェルミ分布やボルツマン分布が登場し、キャリヤ(電子・正孔)濃度の定量的な解説が本格的になっていきます。これらの分布関数は統計力学の結果なので、統計力学を勉強するに越したことはないですが、ほとんど知らなくてもそういう式で表される分布関数(電子の分布を決める関数)があるんだなと飲み込んで先に進んでも大丈夫だと思います。

 

第5章では、第2章で勉強した拡散現象が再び登場します。数式の変形が多いですが、行間の飛びが少なく、苦労せずに式が追えると思います。が、この本全体として見ると重要度は低いのでさっと読むだけでいいような気がします。

 

第6章ではかの有名な(?)pn接合の基本的な解説がされています。数式と図、言葉による丁寧な解説なので、これらの対応が理解できれば、この章以降のデバイスの話も理解しやすくなります。

 

第7~10章ではダイオードからトランジスタまで、代表的な半導体バイスの基本原理を、やはり数式と図、言葉で以て丁寧に解説してくれています。例題を解きつつ本文をよ読み進めていくと理解が深まると思います。丁寧に解説してくれているとはいっても、トランジスタの動作原理なんかは難しいと感じたので時間をかけて勉強するしかないですね。ここまでがこの本のメインだと思われます。

 

第11章はさらに進んだ種々の半導体バイスの紹介と簡単な説明です。

 

第12章の半導体バイス作製プロセスは電気・電子系の人にとってはあまり必要がないかもしれませんね。材料系の人にとっては読んだ方がいいとは思いますが、この本の中ではおまけみたいな感じです。

 

 

けっこういい本だなと思ったんですが、ユーザーが少ないみたいなので軽く紹介してみました。気になったら是非、読んでみてください。