あべんじゃのブログ

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ブルーバックス はじめてナットク!超伝導

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講談社ブルーバックスから出ている超伝導についての読み物です。著者はバルク超伝導磁石の研究者である村上雅人さんで、バルク超伝導体と永久磁石を用いた人間浮上のデモ実験(表紙がそのイメージ)でも有名です。本書は全編を通して対話形式で話が進み、読み物としてはとても読みやすくなっています。

 

目次(副節は省略)

序章 超伝導で人が浮く

第1章 電気抵抗ゼロの秘密

第2章 超伝導と巨大な電子の波

第3章 超伝導と熱力学

第4章 超伝導と熱力学(実践編)

第5章 高温超伝導を探して

第6章 超伝導を何に使うか

第7章 最初の人間浮上はなぜ失敗したか

 

内容紹介

 著者、村上雅人氏はある講演会で超伝導体を用いて金魚鉢を浮かせるデモ実験を実演する。しかし聴講者からは、人間までは浮かないだろう、との反応が。そこから、バルク超伝導体による人間浮上を実現するための挑戦が始まった。

 本書ではまず、この挑戦の内容を理解するために超伝導の基礎的な事柄を数式はほとんど使わずに定性的に解説してくれる。初めにゼロ抵抗からマイスナー効果、ピン止め効果といった実験事実を説明している。よくある超伝導体の磁気浮上実験はマイスナー効果のみで浮いているのではなくピン止め効果が本質的である、ということを説明するのが本書の目標の一つであると思われるが、それがよく達成されている。第1~2章では超伝導体の中で起こっていることを、量子力学に基づいて電子と原子核の相互作用などのミクロのスケールで解説、第3~4章では自由エネルギーやエントロピーという熱力学の概念を用いてマクロなスケールで解説している。第5章では1986年の高温超伝導発見に伴う超伝導フィーバーを懐古しながら高温超伝導探索の歴史を説明してくれ、当時の熱気を感じさせる。最初の発見者はIBMの研究者、ベドノルツ氏とミュラー氏であったが、その後の発展には田中昭二氏など日本人研究者も数多く貢献しており、その活躍の様子にはわくわくさせられる。第6章では、MRISQUIDなどの既に実用化されているものから、実用化する上で問題となる交流抵抗のことなどが紹介されている。そして最後に、失敗経験も織り交ぜながら人間浮上デモ実験成功までの経緯が描かれている。

 

おわりに

 本書は1999年に出版された本で、残念ながら現在は絶版のようです。しかし、読み物としてはとても面白いので図書館や古本屋さんで見かけた際はぜひ読んでみて下さい。きっとサクサク読み進められます。