あべんじゃのブログ

学んだことや科学・技術・教育などについて書いて行けたらと思ったり思わなかったり。

超伝導体の磁気浮上

超伝導を研究対象とする分野には理論から実験、基礎から応用まで色々ありますが、応用超伝導、その中でもバルク材料についてまとめてみようと思います。

バルク材料というのは、薄膜に比べて厚さがあり、線材に比べて短いという、塊状の材料を指します。

応用超伝導分野では、送電線やコイルへの応用目的で線材や、デバイス目的で薄膜が研究対象になることが多いように思います。これらはバルクより色々な応用先がありますからね。

逆に、超伝導バルク材料にはどういう特徴、用途があると思います?

「ただの塊でしょ?浮かせてデモ実験するぐらいしかないんじゃない?」

確かに!

いや、確かに!じゃなくて、ちゃんとバルクならではの特徴と用途があるんです。ただ、その前にそのよく見るデモ実験について考えてみたいと思います。

応用超伝導分野では往々にして第Ⅱ種超伝導体が研究されていますが、この第Ⅱ種超伝導体では、外部から磁場をかけていくと、始めはマイスナー効果を示しますが、ある磁場(下部臨界磁場)で超伝導相と常伝導相が混在する混合状態が現れます。そしてさらに大きな磁場(上部臨界磁場)をかけると超伝導状態が破れます。

この混合状態の時、一部の磁場が超伝導体を貫通していくわけですが、それは超伝導体が、外部磁場を一心に弾き出すより、ちょっとだけ受け入れた方がエネルギー的に得だからです(深くは言及しませんが)。

ただ、超伝導体内に侵入した磁束は、そのままでは超伝導体が動いたときなどに動いて電場が変化し、変に電流を生じたりして不安定です。

ここで、あえて超伝導体ではない物質を混ぜます。そうすることで超伝導バルク材料内に常伝導相ができますね。外部磁場はこの常伝導相目掛けて侵入し、常伝導相の外、つまり超伝導相には侵入しようとしにくくなります。その方がエネルギー的に安定だからです(2度目)。

こうして、超伝導バルク材料の中に磁束を受け入れる不純物を最初から混ぜてやることで、磁束はその常伝導相に侵入し、固定されることになります。

これをピン止め効果と呼ぶのですが、このピン止め効果によって、超伝導体の磁気浮上やフィッシング効果が実現することになります。マイスナー効果だけじゃないんです。マイスナー効果だけだと宙ぶらりんのフィッシング効果は実現しませんよね。

長くなってきたような気がするのでとりあえずここまでにして、超伝導バルク材料の応用についてはその2に書くことにします。